やる気が出ない日は、どうすればいいのか?

CONTENTS

モチベーションが上がるのを待っていませんか?

今日は練習に行きたくない。
勉強しなければいけないのに、なかなか始められない。
やった方がいいことは分かっているが、どうにも気持ちが乗らない。

そんな日はあります。

そこで、

もっとモチベーションを上げなければ。

と考えることもあるでしょう。

好きな音楽を聴く。目標を思い出す。気合を入れる。

それで気持ちが変わることもあります。
ただ、その前に考えてみたいことがあります。

そもそも、なぜやる気が出ないのでしょうか。

やる気が出ないとき、必要なのはいつも「モチベーションを上げること」なのでしょうか。

モチベーションを「ある/ない」だけで考えない

モチベーションという言葉は、

今日はモチベーションが高い。
最近モチベーションが低い。

と、量のように表現されることがあります。

APA Dictionary of Psychologyでは、モチベーションについて、行動に目的や方向を与える力や、目標に向けて身体的・精神的な努力をしようとする意欲などと説明しています。

参考:APA Dictionary of Psychology「motivation」

この記事では、日常的に使う「やる気」を入口に、より広い意味での「モチベーション」について考えてみます。

ただ、モチベーションを考えるとき、「どれくらいやる気があるか」だけではなく、「なぜ、それをやるのか」にも目を向ける必要があります。

そこで参考になるのが、Edward DeciとRichard Ryanらによって発展してきた自己決定理論(Self-Determination Theory:SDT)です。

自己決定理論では、モチベーションの有無や強さだけでなく、どのような理由で行動しているのかという「質」も重視します。

その中で重要とされているのが、自律性・有能感・関係性という3つの基本的心理欲求です。

参考:APA「Self-Determination Theory of Motivation」

「やりたいからやる」だけが、良いモチベーションではない

スポーツなら、

好きだから練習する。

という状態が理想的に見えるかもしれません。

確かに、走ること自体が楽しい。ウエイトトレーニングが好き。練習することがおもしろい。

そう思えるなら、それも一つの強い動機です。
でも、競技生活ですべてのトレーニングを好きになれるとは限りません。

私自身、筋力トレーニングがかなり苦手です。
特定の部位が極端に疲労していく感覚が、はっきり言って嫌いです。
一方、スプリントトレーニングはかなり好きで、全身を使って限界まで走ったときの疲労感には、他では得られないものを感じます。

大学2〜3年生のころ、私はかなりのボリュームのトレーニングをしていました。
朝6時45分ごろから、1時間半ほど筋力トレーニングをすることもありました。
そのあと9時から授業だったので、授業中はよく寝ていました。

では、好きでもない筋力トレーニングを、なぜ続けられたのでしょうか。

当時の指導者は、元日本記録保持者を育てた経験のある方でした。
その指導者が、「まずは体力だ」と考えている。

それなら、

四の五の言わず、まずは従ってやってみよう。

と自分なりに決めていました。

筋力トレーニングそのものを「やりたい」と思っていたわけではありません。

でも、

自分が速くなるために必要なのだろう。だから、まずはやってみる。

とは思っていました。

自己決定理論では、外から与えられた行動であっても、その意味や価値を自分なりに受け入れていく過程が重視されます。

つまり、「楽しいからやる」だけでなく、「自分にとって大切だからやる」も、自律的な動機づけになり得るということです。

すべてを好きになる必要はありません。

大切なのは、「自分はなぜこれをやるのか」に、自分なりの答えを持てるかどうかです。

やる気が出ないときに見たい3つのこと

「最近やる気が出ない」と感じたとき、その理由を考える一つの手がかりとして、自己決定理論の3つの基本的心理欲求から自分の状態を見てみることができます。

① 自律性|自分で選んでいる感覚はあるか

自律性とは、好き勝手にできることではありません。

自分の行動を、自分自身が納得して引き受けている感覚に近いものです。

例えば同じトレーニングでも、

コーチに怒られるからやる。

のと、

コーチから提示された練習だけれど、自分の課題に必要だと思うからやる。

のでは違います。

私が大学時代に筋力トレーニングを続けられた理由の一つも、ここにあったのだと思います。

指導者から与えられた練習ではありましたが、最後は、

この考え方を信じて、まずはやってみよう。

と自分で引き受けていました。

逆に、

なぜこれをしているのか分からない。
本当はやりたくないのに、周囲に言われるから続けている。

という状態なら、「やる気を上げる方法」を探す前に、自分は、何のためにこれをしているのかを問い直す必要があるかもしれません。

② 有能感|「できている」「伸びている」と感じられるか

有能感とは、その活動の中で「自分にはできる」「うまく働きかけられている」と感じられることです。

頑張っているのに記録が伸びない。
何をしてもうまくいかない。
成長している感覚がない。

そんな状態が続けば、「やっても意味がないのではないか」と思うこともあります。

大学時代の私は、トレーニングを続ける中で少しずつ記録も向上していました。

それが、

やっていることに意味があるのかもしれない。

と思える材料になっていたのだと思います。

自己ベストのような大きな結果だけではありません。
以前できなかった練習ができた。
設定タイムをクリアできた。
動きが少し良くなった。

そうした変化も、自分が前へ進んでいることを知らせてくれます。

③ 関係性|誰かとのつながりはあるか

三つ目は、関係性です。

仲間とつながっている。
自分を見てくれるコーチがいる。
チームに居場所がある。

自己決定理論では、こうした他者とのつながりや所属感も重要な心理的欲求として位置づけられています。

大学時代の朝練習も、私一人だったら続けられていたかどうかは分かりません。

朝から周囲の競技者も練習している。
自分もやる。
誰かが頑張っている姿を見て、また淡々と始める。

毎朝、

今日も最高にやる気がある。

と思っていたわけではありません。

それでも、一緒に取り組む人がいる環境は、自分の行動を支えていたのだと思います。

人材育成でも、「本人のやる気」だけを見ない

こうした考え方は、スポーツだけのものではありません。

人材育成の領域でも、本人の「やる気」の強さだけでなく、仕事の設計や周囲との関係を含めて考える視点があります。
坪谷邦生氏の『図解 人材マネジメント入門』では、大沢武志氏の『心理学的経営』をもとに、自己有能性・自己決定性・社会的承認性という心理的条件が紹介されています。

参考:ディスカヴァー・トゥエンティワン「やりがいある仕事のために必要なことは?」

これは自己決定理論とは別の枠組みです。

それでも共通して見えてくるのは、人が行動する理由を、本人の気持ちの強さだけに求めていないことです。

これはスポーツでも同じだと思います。

競技者に、

もっとやる気を出せ。

と言う前に、

自分で選んでいる感覚があるのか。
成長を感じられているのか。
周囲との関係はどうなのか。
その競技やトレーニングの意味を、自分自身が納得できているのか。

を見ることができます。

モチベーションは、本人の内側だけで完結するものではありません。

本人と環境との関係の中でも変わります。

「やる気が出ない」は、自分からの情報かもしれない

だから、やる気が出ないとき、

自分は意志が弱い。
もっと頑張らなければ。

と、すぐに結論づけなくてもいいと思います。

一度、「なぜ、いまやる気が出ないのだろう」と問い直してみる。

何のために続けているのか分からなくなっていないか。
自分で選んでいる感覚がなくなっていないか。
最近、成長を感じられていないのではないか。
チームや指導者との関係で引っかかっていることはないか。

あるいは、単純に疲れているだけかもしれません。
身体的な疲労や睡眠不足、体調の変化まで、すべて「モチベーションの問題」にする必要はありません。

私自身、朝から1時間半トレーニングをして授業中に寝ていたことを思い返せば、何でも「四の五の言わずやればいい」と言いたいわけではありません。

自分の状態を見ることも必要です。

「やる気が出ない」は、自分について何かを知らせている情報かもしれない。

そう考えると、必要な対応も変わります。

毎日、やる気が高い必要はない

もう一つ考えたいのは、毎日高いモチベーションを維持する必要があるのか、ということです。

今日は練習したくて仕方がない。
別の日は普通。
また別の日は、少し面倒に感じる。

そんな変化があっても不思議ではありません。

だから、

やる気が高い
↓
行動できる

という一つのパターンだけにしない。

今日は気分が乗らない。
でも、自分に必要だと分かっているから淡々とやる。
疲労が強いから、今日は休む。
始めるのが面倒なだけなら、まずウォームアップまでやってみる。

どれも選択肢です。

重要なのは、「やる気が出るまで待つ」以外の選択肢を持つこと。

そして、自分の状態を見たうえで、

今日はどうするのか。

を選ぶことです。

「やる気を上げる」前に、「なぜ」を考える

やる気が出ない日はあります。

そんなとき、無理にモチベーションを上げようとする必要があるとは限りません。

まず、なぜ、やる気が出ないのかを考えてみる。

自分で選んでいる感覚がなくなっているのか。
成長を感じられないのか。
周囲との関係なのか。
何のためにやっているのかが分からなくなったのか。
それとも、ただ疲れているのか。

理由が見えてきたら、

では、今日はどうするのか。

を考える。

大学時代の私は、筋力トレーニングが好きだったから朝6時45分からトレーニングしていたわけではありません。
それでも、自分なりに意味を受け入れ、周囲と一緒に取り組み、少しずつ成長も感じていました。
だから、嫌いなことでも淡々と続けられたのだと思います。

目指したいのは、いつでもモチベーションが高い人になることではありません。

モチベーションが揺れる日でも、自分の状態を問い、自分で次の行動を選べること。

その方が、長く何かに取り組んでいくうえでは大切なのかもしれません。

その「やる気が出ない」は、あなたに何を知らせていますか?

この記事をシェアする
  • URLをコピーしました!

この記事を書いた人

WILLINQ JOURNAL編集部。

スポーツ指導、競技経験、人材育成の実務経験をもとに、スポーツとの向き合い方、Will、目的と手段、学びについて発信しています。

答えを急ぐのではなく、問い、迷い、経験し、振り返る。
その過程で、自分なりのWillを育てていくためのきっかけを届けます。

CONTENTS