「目標を持ちなさい」と言われるけれど
スポーツをしていると、目標を聞かれることがあります。
全国大会に出たい。
自己ベストを更新したい。
大会で優勝したい。
明確な目標を持っている人を見ると、
自分も何か目標を決めなければ。
と思うこともあるでしょう。
でも、競技を始めたばかりで、まだ何を目指したいのか分からない。
大会が終わって、次の目標が決まらない。
これまで目指していたものを見失ってしまった。
そんな時期もあります。
目標は、あれば進む方向を見つけやすくなります。しかし、いつでも目標が必要なのでしょうか。
目標があると、進む方向は見えやすくなる
以前の記事「目的と目標は、何が違うのか。」では、目標を、
目的に近づくために設定する、具体的な到達点
と整理しました。
目標があれば、何を目指すのかが明確になります。
そこから、
何に取り組むのか。
どこまで進んだのか。
も考えやすくなります。
だから、目標そのものを否定する必要はありません。
ただ、目標が役に立つことと、いつでも目標を持っていなければならないことは別です。
目標がない時期もある
友達に誘われて部活動に入ったばかりなら、
全国大会を目指す。
と言われても、まだ実感がないかもしれません。
競技を始めて間もなければ、どこまで上達したいのか、どれくらい競技を続けたいのかが分からなくても不思議ではありません。
一方で、これまで持っていた目標がなくなることもあります。
大会が終わった。
目標を達成した。
あるいは、目指していたものを手放した。
その直後に、次の目標が見つかるとは限りません。
そんなとき、目標欄を埋めるためだけに「次は○○を出す」と決めても、それが本当に自分の目指したいものとは限りません。
目標には、空白の時期があってもいい。
目的があるなら、そこに立ち返る
目標が決まらないとき、まず考えてみたいのは、
何のために競技をしているのか。
です。
例えば、
自分がどこまで速くなれるのか挑戦したい。
という目的はある。
でも、次に何秒を目指すかまでは決まっていない。
それなら、無理に目標タイムを決めなくても、
いまの自分には何が必要なのか。何を試してみたいのか。
を考え、練習することはできます。
目的は、目指す方向。
目標は、そこへ近づくための具体的な到達点。
途中の到達点が一時的に決まっていなくても、向かいたい方向が分かっているなら進むことはできます。
目的も分からないなら、まず目の前のことに取り組む
では、
そもそも何のために競技をしているのかも分からない。
という場合はどうでしょうか。
ここで参考になるのが、キャリア形成における「筏下り」と「山登り」という考え方です。
「筏下り」の時期には、長期的な行き先を最初から決めるのではなく、目の前の短期的な目標に取り組みながら経験を積み、その後、自分が登る山を決めていくと考えます。
もちろん、これはキャリア形成についての考え方で、スポーツにそのまま当てはめるものではありません。
ただ、先の目標や方向がまだはっきり見えていなくても、まず経験することで、自分の関心や進みたい方向が見えてくることがある。
その点は、スポーツにも通じると思います。
参考:大久保幸夫『日本型キャリアデザインの方法―「筏下り」を経て「山登り」に至る14章―』
もちろん、これは日本企業におけるキャリア形成についての考え方です。
ただ、進む先が決まっていない時期にも、目の前のことに取り組む意味はあるという点は、スポーツにも通じると思います。
まず練習してみる。
大会に出てみる。
違う種目をやってみる。
仲間と競ってみる。
その中で、
走ることがおもしろい。
もっと速くなりたい。
この種目を続けてみたい。
と、自分の関心が見えてくることがあります。
目標を決めてから行動するだけではなく、行動したから目標が見えてくることもある。
ということです。
目の前のことに取り組みながら、自分を知る
ただ、
目標がないなら、とにかく練習していればいい。
というわけでもありません。
目の前の練習や活動に取り組みながら、ときどき自分の反応を振り返ってみる。
何がおもしろかった?
もっとやってみたいと思ったことは?
何ができるようになって、うれしかった?
そんな小さな反応の中に、自分が何を大切にしたいのかを知る材料があります。
経験しながら、自分の関心や意思を知っていく。
その先で、
次はこれを目指してみたい。
と思えるものが見つかることもあります。
目標がない時期も、止まっている時間ではない
目標があれば、進む方向は見えやすくなります。でも、見つからない時期に無理につくる必要はありません。
目的が分かっているなら、そこに立ち返る。
目的もまだ分からないなら、目の前の練習や活動に取り組みながら、自分が何に心を動かされるのかを見ていく。
目標がない時期も、自分を知る時間にはできる。
そのときに取り組んだこと、そこで得た経験が、次の目標を考える材料になります。
目標がないいま、何を大切にして取り組みますか?