他人と比べることは、悪いことなのか?

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「他人と比べるな」と言われるけれど

「他人と比べなくていい」
「比べるなら、昨日の自分と比べよう」

スポーツでも、こうした言葉を聞くことがあります。

確かに、他者との比較によって苦しくなることはあります。

自分より速い競技者の記録を見る。
同学年の競技者が全国大会に出場する。
チームメイトが、自分より速いペースで成長していく。

そんな姿を見るたびに、

自分は全然伸びていない。
自分には才能がないのかもしれない。

と思うこともあるでしょう。
では、他人と比べないようにすればいいのでしょうか。
私は、そう単純ではないと思っています。

競技スポーツには、そもそも他者との比較があります。

順位がつく。
タイムが並ぶ。
大会への出場枠や代表選考がある。
目の前には、一緒に競うライバルもいます。

そう考えると、他者との比較そのものをなくそうとするより、比較とどう付き合うかを考える方が現実的ではないでしょうか。

大切なのは、誰と、何を比べ、そこから何を受け取るのかです。
比較そのものではなく、その先を考えてみます。

比較は、励みにも落ち込みにもなる

他者との比較は、必ずしも良いもの、悪いもののどちらか一方ではありません。

あるスポーツ場面の研究では、自分より適度に優れた相手との比較は、自己改善への動機の高さと関連していました。一方、はるかに優れた相手との比較では、意欲が低下し、取り組みから距離を置こうとする傾向がみられました。
また、自分より下の相手との比較では、その時点での幸福感が高まる一方、向上しようとする動機が低くなる傾向も報告されています。

参考:Diel, K. et al.「Motivational and emotional effects of social comparison in sports」

つまり、

自分より上を見るから良い。
自分より下を見るから悪い。

という話でもありません。

同じ比較でも、誰と比べるのか、その差をどう捉えるのか。
そこから何を受け取り、どう行動するのかによって、比較がもたらすものは変わります。

だからこそ、

他人と比べるべきか、比べるべきではないか。

という二択ではなく、

その比較を、自分はどう使っているのか。

を考えることが大切なのだと思います。

結果だけを比べると、「上か下か」で終わる

私自身、高校時代に他者との比較で苦しくなった経験があります。

中学校から一緒に競技を続けていたチームメイトがいました。

中学時代は中距離を中心に走っていましたが、高校から400mにも取り組むようになり、どんどん力をつけていきました。
そして、高校2年の夏ごろには、400mでも私は勝てなくなっていました。
その後も彼は成長を続け、高校では全国規模の大会で入賞し、大学では日本代表になるまで競技力を高めていきました。

一方の私は、思うように記録が伸びない。

当時、私が見ていたのは主に、タイム、順位、そして、練習態度でした。

特に受け止められなかったのが、

自分の方が練習しているつもりなのに、なぜ勝てないのか。

ということでした。

少なくとも当時の私には、「誰よりも練習熱心」というタイプには見えていませんでした。それなのに速い。

そこから私は、

才能が違う。
自分には勝てない。

という結論を強く受け取っていました。

結果を比較すれば、確かに負けています。
でも、いま振り返ると、比較から受け取れる情報はそれだけではありませんでした。

比較する「もの」を増やしてみる

他者との比較というと、タイムや順位を思い浮かべやすいと思います。

もちろん、結果を見ることには意味があります。

ただ、そこで終わらず、比較する観点を少し広げてみます。

結果を見る

まずは、タイム、順位、勝敗。

これは自分の現在地を知るための重要な情報です。

自分より速い競技者がいるのに、「人と比べる必要はない」と言って、その事実から目を背ける必要もありません。

差があるなら、差がある。

まずは、その事実を受け取ります。

変化を見る

次に、どのように変化してきたのかを見てみます。

例えば、現在のタイムだけを見れば0.3秒の差があったとしても、

自分はこの1年でどれくらい伸びたのか。

相手は、いつから記録を伸ばしてきたのか。

どのような変化を経て、現在の記録にたどり着いたのか。

結果という「点」だけでなく、そこまでの「変化」を見ることで、得られる情報は増えていきます。

取り組みを見る

さらに、その人は、どのように競技に取り組んでいるのかを見ることもできます。

どんな練習をしているのか。
どんな準備をしているのか。
コーチからのフィードバックをどう受け取っているのか。
練習や試合をどう振り返っているのか。

ただし、ここでも注意したいことがあります。

練習の「量」だけを比較しないことです。

「あの人は週6日練習している」
「自分よりたくさん走っている」

と量だけを見れば、結局また一つの数字を比べていることになります。

競技歴も、身体的な特性も、現在地も、課題も違います。

大切なのは、どれだけやっているかだけでなく、何のために、どう取り組んでいるのかを見ることです。

他者と同じ量、同じ練習をすれば、同じように成長できるとは限りません。

比較する観点を広げるとは、単に見る数字を増やすことではないのだと思います。

「なぜ違うのか」と考えていたら、見えるものは違ったかもしれない

高校時代の自分に戻れるなら、チームメイトとの比較で、別の問いを持ちたいと思います。

なぜ彼は、こんなに速くなったのだろう。

自分と彼には、どんな特性の違いがあるのだろう。

彼との差を縮められるとしたら、自分のどこに可能性があるのだろう。

自分には、何を伸ばせる余地があるのだろう。

もちろん、そう考えたからといって、彼に勝てたとは限りません。

身体的な特性や、それまでの競技経験など、簡単には埋まらない差もあったかもしれません。

それでも、

あいつは速い。
自分は遅い。
才能が違う。

だけで比較を終わらせるより、得られるものは多かったはずです。

結果の差を、自分を否定する材料だけにするのではなく、自分を理解するための問いに変える。

それができれば、比較の意味も変わります。

比較したら、最後は自分に戻ってくる

ここで重要なのは、優れた競技者のやり方を、そのままコピーすることではありません。

「あの人はこの練習をしているから、自分もやろう」
「あの人は毎日走っているから、自分も毎日走ろう」

では、他者が自分の基準になってしまいます。

比較したあとに、もう一度自分へ戻ってきます。

相手と自分は、何が違うのか。

そこから何を学べるのか。

自分にも使えるものはあるのか。

では、自分は何を選ぶのか。

流れにすると、比較 → 情報 → 問い → 選択となります。

他者を見ることを、自分を評価するためだけの行為で終わらせない。

自分の現在地や課題、可能性を知るために使う。

そう考えると、比較は自分の成長につながるための情報になります。

ライバルがいるから、頑張れることもある

「負けたくない」
「あいつには勝ちたい」

そう思うこと自体を、悪いものにする必要もないと思います。

金間大介氏の著書『ライバルはいるか?』では、社会人への調査などをもとに、ライバルという存在が意欲や成長にどう関わるのかが扱われています。
公式の書籍紹介でも「負けたくないと思える相手がいるから、成長しようと頑張れる」という問題意識が示されています。

参考:金間大介『ライバルはいるか? 科学的に導き出された「実力以上」を引き出すたった1つの方法』(ダイヤモンド社)

誰かが速いから、

自分ももっと速くなりたい。

と思う。

同じ大会に出る相手がいるから、

あと一本頑張ろう。

と思える。

競争やライバルの存在が、自分を前へ進ませることもあります。

一方で、比較するたびに「自分はダメだ」と感じたり、相手に勝つことだけが競技の意味になったりすれば、比較との付き合い方を考え直す必要があるかもしれません。

だから、競争を一括りにして「良い」「悪い」と決めるのではなく、その比較が、自分に何をもたらしているのかを見ることが大切なのだと思います。

他人を見ることで自分を知る

他人と比べて落ち込むことはあります。

自分より速い。
自分より結果を出している。
自分より成長しているように見える。

その事実を見れば、悔しいこともあるでしょう。

だからといって、無理に「比べないようにしよう」と思わなくてもいいのではないでしょうか。

比較するなら、結果だけで終わらせず、最後に「では、自分はこれからどうするのか」へ戻ってくる。

他者との比較は、自分の価値を決めるものではありません。

自分の現在地や課題、可能性を知るための情報として使うことはできます。
比較を、自己評価で終わらせず、自分を知るための情報に変える。

そうすれば、ライバルや自分より優れた競技者の存在も、自分が前へ進むための材料にできるかもしれません。

他者と、何を比較していますか?

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この記事を書いた人

WILLINQ JOURNAL編集部。

スポーツ指導、競技経験、人材育成の実務経験をもとに、スポーツとの向き合い方、Will、目的と手段、学びについて発信しています。

答えを急ぐのではなく、問い、迷い、経験し、振り返る。
その過程で、自分なりのWillを育てていくためのきっかけを届けます。

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